「防衛計画の大綱」とは?
防衛計画の大綱は、日本における安全保障政策の基本的指針で、10年後までを念頭に置き、中長期的な視点で日本の安全保障政策や防衛力の規模を定めます。
本綱に基づいて5年ごとの具体的な政策や装備調達量を定めた中期防衛力整備計画が策定されます。
趣旨
我が国の安全を維持し、国民の生命・財産・領土・領海・領空を守り抜き、揺るぎない意思と能力を明確に示すことは、我が国が独立国家として第一義に果たすべき責任である。
国際社会によるサイバー領域の利用の急速な拡大は、陸・海・空という従来の物理的な領域の対応を重視してきた安全保障の在り方を根本から変えようとしている。
情報通信分野における急速な技術革新を利用して、陸海空の全ての領域を横断的に連携させた新たな防衛力の構築に向けて変革を図る。
安全保障環境
グレーゾーンの事態は、軍事と非軍事の境界を曖昧にして、明確な兆候のないまま、ハイブリット戦のように、より重大な事態へと急速に発展していくリスクをはらんでいる。
四面環海を持つ我が国は、本土から離れた多くの島嶼と広大な排他的経済水域を有している海洋国家である。
資源や食料の多くを海外との貿易に依存する我が国にとって、海上・航空交通の安全を確保
することが、平和と繁栄の礎である。
我が国は、自然災害が多発することに加え、都市部に産業・人口・情報基盤が集中するとともに、沿岸部に原子力発電所が多数存在している。
防衛の基本方針
有事の際に対応を的確に行うため、平素から、関連する計画の体系化を図りつつ、策定と見直しを進めるとともに、シミュレーションと総合的な訓練・演習を拡充し、対処態勢の実効性を高める。
全ての領域における能力を有機的に融合し、相乗効果により全体としての能力を増幅させるクロス・ドメイン作戦により、多次元統合防衛力を構築する。
平素から、サイバー領域において、自衛隊の活動を妨げる行為を未然に防止するために、常時継続的な監視、情報の収集・分析を行う。かかる行為の発生時に、速やかに事象を特定し、被害の局限、被害復旧措置を迅速に行い、脅威に対処して被害を最小化する。
優先事項
サイバー領域を活用した情報通信ネットワークは、自衛隊の活動の基盤であり、サイバー領域に対する攻撃は、自衛隊の組織的な活動に重大な障害を生じさせるため、サイバー防衛能力として、ネットワークに係る常時継続的な監視能力、被害を局限化する能力、被害復旧措置を迅速に行う能力の強化を図る。
情報通信能力の強化、情報収集、分析能力の強化、情報共有態勢の構築を推進する。
我が国への攻撃に実効的に対応するため、海上・航空優勢を維持することが極めて重要であり、周辺海空域における常続監視を広域にわたって実施する。
幅広い層から多様かつ優秀な人材を確保するための制度面に取り組む一方で、人工知能の技術革新の成果を活用した無人化・省人化を推進する。
全ての自衛隊員が高い士気を維持し自らの能力を十分に発揮し続けられるよう、生活・勤務環境の改善を図るとともに、ワークライフバランスの確保のため、防衛省・自衛隊における働き方改革を推進する。
自衛隊の能力と一体性を高めるための教育・研究の充実を促進するほか、防衛省・自衛隊の組織マネジメント能力に関する教育の強化を図る。
従来の維持整備方法の見直しにより、より効果的・効率的な維持整備を図り、装備品の高
い可動率を確保する。
現有の装備体系を統合運用の観点も踏まえて検証し、合理的な装備体系を構築する。各自衛隊の運用に必要な能力を踏まえつつ、装備品のファミリー化、装備品の仕様の最適化・共通化、共通して保有する装備品の共同調達を行うとともに、重要度の低下した装備品の運用停止、費用対効果の低いプロジェクトの見直しや中止を行う。
自衛隊の装備品の質及び量を必要かつ十分に確保するために、高性能の装備品を可能な限り安価に取得して、予算の計上のみならず執行に際しても、徹底したコスト管理・抑制を行う。長期契約を含め、装備品の効率的な調達に資する計画的な取得方法の活用と維持整備の効率化を推進するとともに、ライフサイクル全体を通じたプロジェクト管理の取り組みを強化する。
新たな領域に関する技術や、人工知能のゲーム・チェンジャーとなり得る最先端技術を始めとする重要技術に対して選択と集中による重点的な投資を行うとともに、研究開発のプロセスの合理化により研究開発期間の大幅な短縮を図る。
企画提案方式の積極的な活用して、企業の先行投資の促進を図るとともに、企業能力を最大限に引き出す。
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